小水力発電への思いと小長辿発電所見学記
里中事務局長に続き、今回のブログは、副代表の島田より小水力への思いと発電所見学記を書かせていただきます。
私は東京電力の土木技術者として新入社員当時から20数年、3カ所の揚水発電所のダム建設現場に駐在した他、松本に住んで梓川・高瀬川の水力発電所の運転・維持管理・改修計画等の業務に携わりました。東京電力を退職した後は、10年近く子会社の土木設計コンサルタント会社で海外事業や発電設備の設計・維持管理に関わる仕事に携わり、その間も多くの水力地点に関りを持つ事ができました。
そのような経験の中、大正期や昭和初期に建設された水力発電所に触れる機会も多く、それら発電所の取水口や沈砂池、導水路トンネル、水槽や水圧鉄管を点検したり改修計画を策定したりするたびに、設備を建設した先人たちは材料も乏しく品質も不十分、施工方法も人力主体だった中で、いかに河川の水を無駄なく利用して少しでも多くの電気が生み出せるように設計に知恵を絞ったか、工夫を重ねて施工して発電所を完成させたか、それらの努力の積み重ねの上に数10年間にわたる安定運転が継続されているという事を、何度も実感させられました。
水推会を設立して、地域に根差した小水力発電を少しでも国内に増やせるようお手伝いしたいと考えたのも、その様な経験の中で感じた先人の思いを、現在においても実践したいと願ったからにほかなりません。私自身の知見や能力はごく限られたものですが、この分野で知り合った多くの水力好きの方々と力を合わせて、小水力発電の可能性を拡げて行けたらと思います。
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私の思いはさておいて、私が見学した小水力発電所の印象を、このブログでいくつか紹介していきたいと思います。第1回目は、里中さんが事務局長を務める関西広域小水力利用推進協議会が2024年10月に開催した見学会で訪れた、「小長辿(こながたわ)発電所」です。兵庫県香美町で鴻池組が設計・建設・運転している発電所(最大出力199kW、最大使用水量0.115m³/秒、有効落差208.7m)です。
この発電所は、もともとは地元の香美里山再生協議会の皆さんが構想して流量観測等を実施したものの、資金繰りや技術的な課題で壁にぶつかっている中、地元とご縁のあった鴻池組に話しが巡ってきて、再エネ導入に前向きに取り組む会社方針もあり実施を決めたと伺いました。
高落差、少水量のためイタリア製の6射式縦軸ペルトン水車と発電機を設置していますが、発電できる流量の幅が広く、稼働率を高められているとの事でした。


標高約600mの山上で既に廃村となった、旧小長辿集落の町道から20mほど入った農業用水の取水跡地に取水設備が設置されています。そこから水槽・沈砂池を経て580m水平方向に塩ビ管で導水後、急な坂道である非舗装の町道に沿って約1.2kmポリエチレン管が埋設され、最後は斜面に設置された56mの水圧鉄管を経て発電所へとつながります。


現場を案内して下さった鴻池組の方から、
① 住民や地元団体等への協力依頼等には協議会メンバーが同行し、全面的に事業化に協力してもらえたこと
② 設置工事や維持管理は地元企業に委託していること
③ 地元民宿等を積極的に活用するなど、地元への還元を常に意識していること
など、地域と密着した発電所の建設・運転管理の実態を紹介していただきました。
一方で、技術的な課題としては、
① 取水口のスクリーンバーの設計を3度見直す必要があったこと
② 水槽や沈砂池、土砂吐きの構造について検討が不十分であったこと
③ 水圧管路の施工にあたり品質管理が不十分で通水後に苦労したこと
④ 水圧管路設置斜面の伐採範囲など、事前にもっと検討すべきだったこと
など、多くの反省点もご教示いただきました。
これらのコメントは、私自身が現在携わっている小水力建設現場や調査設計地点において貴重なアドバイスになっています。
小長辿発電所の事例をみると、過疎化が進む地域の危機感と将来への思いを発電事業者がくみ取りつつ、安全で脱炭素に貢献する地域資源を活用した再生可能エネルギーの拡大を目指す、そのような地域の皆さんと事業者の二人三脚が発電所を運開に導いたと思います。ただそれだけでは発電所の末永い運転継続は難しく、技術的な課題を克服し続ける努力や地域の方々と共存し続ける姿勢が更に必要だと実感させていただきました。
ご案内くださった鴻池組の皆さん、地域の皆さんにあらためて感謝申し上げます。
(文責:島田保之)